登山をしていて目の前で人が死んだ話

ちょいと重い話ですが良かったら読んでください。

僕は登山にハマってまだ日も浅いですが、今後も登山をする上でケガ、遭難、死のリスクというものは切っても切り離せないんだということを身に染みて味わう出来事があったので書いておきます。

登山が好きな方や、登山をこれから始めようと考えている方に対してはあまりネガティブなことは言いたくないのですが、自分が同じ目にあわないとも言い切れないということも頭に入れておいてもらえたらなと思います。

先に言っておきますが、僕はもちろんこれからも登山はします。危険な山にも登るでしょう。

目次

北岳登山での出来事

つい最近の出来事です。
10月の3連休のうち2日を使って、友人と2人で1泊2日で北岳ピストン登山した時のことでした。

北岳(きただけ)は、山梨県南アルプス市にある標高3,193mの山。赤石山脈(南アルプス)に位置し、富士山に次ぐ日本第二の高峰である。富士山に次ぐ日本第二の高峰であり、火山でない山としては日本で最も高い。
日本百名山、新・花の百名山及び山梨百名山に選定されており、同じく日本百名山の一峰の間ノ岳、日本二百名山の農鳥岳とともに白峰三山を構成する。「南アルプスの盟主」とも呼ばれる。-wikipedia

1年前の同じ3連休にも北岳に登ろうとしたんですが、その友人が登山口行きのバス停に着いてから熱を出してしまいトンボ帰りしたという苦い思い出がありました。

さらに、今回もバス停に着いてから落石によりバスが来れないというハプニングもあり(結局別方向から臨時便が来たおかげで行けた)、北岳とはなんだか変な因縁のようなものを感じていたんですが、やっぱりなんだかあるんだなぁ〜と思った。という、そんな前話です。

まぁそんな話はどうでもいいんですが、とにかくそんなことがあったおかげで、登山自体はとても楽しく、終始ワクワクしながら登っていました。
天気も良く「最高だな〜!!」と友人と話しながら、1年越しに叶った北岳登山を楽しんでいました。

85Lのザックを背負い標高差約1600mを登りきる登山も初めてでしたが、ペース的にも順調に登っていました。

標高でいうとどのくらいでしょう、はっきり覚えてはいないんですが2700mくらいからですかね、登山道という登山道もなく、ハシゴや岩場がメインの森林限界に到達します。

森林限界(しんりんげんかい)とは、高木が生育できなくなる限界高度のことを指す。亜高山帯から高山帯に変わる地点でもある。
温度や積雪、風などによる影響で決定される。このため、高緯度ほど森林限界は低くなる傾向にある。
日本においては主に夏の温度・積算温度に従うようである。北海道の利尻島では標高約500m、北海道の大雪山や日高山脈で約1000〜1500m、東北地方で約1600m、日本アルプス中央部や富士山では約2500mほどである。-wikipedia

そしてそのハシゴゾーンを抜けると、高い山ならではの風景になります。

岩だらけの、楽しいゾーンです。

自分はまだ若いということもあり、ひょいひょいとバランスをとって楽しく登っていきます。

樹林帯などの土の上を歩くコースと違って、手を使ってバランスをとって登る場面が多くあるので、ただ登るよりも楽しいし、手を使う分下半身が楽なので好きです。

しかし、そんなところに危険は眠っています。

3000mも越えたところでしょうか、幅もせまく、1人ずつしか通れないような岩場でした。

横を見れば断崖絶壁、うひょ〜こえ〜なんて思いながら登っていたそのときです。

ふと前を見ると、6〜7人ぐらいの人だかりができていたのです。

その中をよく見てみると、真っ逆さまに倒れている60代ぐらいの男性がいました。

お?どうした、こけたのかな〜なんて呑気に思っていたら

「おい!○○!聞こえるか!!」

「とりあえず呼びかけを続けてください。今山小屋に連絡します。」

「これからヘリが来ます。人工呼吸しましょう。」

すぐに、ただならぬ雰囲気であることを理解しました。

自分たちより先に現場にいたその倒れている方の登山仲間と思われる60代の方々4名、山小屋関係者1名、他数名がいて、山小屋と連絡をとりつつ、人工呼吸を始めました。

こんなことを言うのもなんですが、登山を楽しむ余裕は全くなくなっていました。

人命救助の知識なんて、10年前に運転免許をとった時に少しやったぐらい。

どのぐらいその光景を見ていたでしょうか。
しかしその後すぐに山小屋関係の方に

「ヘリも来るし危険なんで知り合いの方以外は先に登ってください。」

と、倒れている男性を少しずらして道をあけました。

内心ちょっとだけホッとしたというか、何もできないのは確かなんですけど、この光景を見ずに済むと思った自分がいました。
その後は登山を楽しむ余裕も、景色を楽しむ余裕もなく、力なくただ淡々と登りました。

ですが岩場を登っている時、ちょっとだけバランスを崩して後ろに倒れそうになりました。なんとか踏ん張れたのですが。
これはやばい。と思い気を引き締め直します。

登っていると、ヘリの音が聞こえてきます。

「あぁ、ヘリが出動できたんだ、良かった」

と思ったのも束の間、ガスがひどく現場付近でずっとウロウロしていました。

あぁ……。もうダメかもしれないな

そんなことを思いました。

実際、倒れた方は次の日の朝、ヘリで遺体として回収されることになりました。

皮肉にも、奇麗な朝日を眺めている時でした。

グっと気を引き締め直し、2日目の登山、下山に向けて動き出しました。

登山の現実

こういう情報は今まで見たことがなかったのですが、軽く調べてみるとこんなデータが。

事故発生状況

これは2016年の情報で、2015年までの表です。

意外?にも死者数はほぼ横ばいですが、やはり登山者数が増えていることもあり、遭難、負傷者は爆発的に増えていますね。

年齢別登山人口割合

※総務省のデータ

年齢別登山人口割合のグラフです。やはり60歳以降の年配の方が多いです。時間もお金もかかりますしね。

遭難者の年齢別比較

※総務省のデータ

これは遭難者だけの割合ですね。

総人口が多ければその分年配の方の事故が多くなるのは必然ですが、やはりそれだけではありません。

経験不足、装備不足、準備不足、体力不足、体力の過信など様々な要因が考えられます。

もちろん、事故にあう人よりも登山を楽しみ、無事に帰ってきている人のほうが圧倒的多数です。

自分の力を過信せず、しっかり準備をすれば大丈夫です。

ただ、若い方も一定数事故にあっているという現実をしっかり受け止めなければ行けません。

登山を始め、慣れてきて余裕ぶっこけるようになってきた〜ぐらいが1番危険でしょうね。車と一緒です。

ちょっと体調が怪しいな〜という時も、大事をとって休んだほうがいいでしょう。

その1回の登山と自分の命を天秤にかけたら、どちらが大事かは明確ですよね

北アルプスに登った時のことですが、山小屋に事故データの掲示板があり、死者もでていると書いてあったことがありました。

まぁ自分は大丈夫だろ〜なんて軽く考えていましたが、今回の事故を通して、全く他人事ではないデータなんだということを身に染みて感じました。

余談:友人の不調

その北岳の下山時です。

一緒に登っていた友人が、「なんだか頭痛がする」と言っていました。
2日目の朝、テントが少し斜めだったこともありほとんど寝られなかったとも言っていました。

「まぁ大丈夫、下山ぐらいはいける」と言っていたので、昨日あんな事故を目の当たりにしたにも関わらず大丈夫だろ〜と楽観的に考えていました。
自分より屈強な肉体をしていたこともあり(笑)

草すべりコースという1時間以上かかる急な下りコースを下っていたときのことでした。

友人は後ろを歩いていたが普通についてきていました。
でも自分のほうがペースが早く、気づいたら徐々に離れていきます。

トイレに行きたかったこともあり、まぁ大丈夫だろと思い先にその下にある山小屋へ向かうことにしました。

そして山小屋について無事トイレに行き、軽くごはんを食べて待っていました。
まぁ遅くとも30分あれば降りてくるかなと思っていたんですが、

30分、1時間、1時間30分と待っても全然来ない……。

これはさすがにおかしい。と思いましたが携帯は圏外なので連絡はとれず。

降りてきた登山者の方に「草すべりコースの途中で休んでいる大柄な男の人を見ませんでしたか?」

と聞くと、

「ああ、いたよ。というか寝てたよ(笑)。なんかダウンしてる感じで」

マジか……。

携帯は圏外

このまま連絡がとれず、降りてこなかったらここに泊まることになるのか

明日の仕事を休むことになるのか

など色々考えましたが「考えたってしょうがない。とにかく山小屋の人に相談してみよう。」

ということで相談してみることに。どこかの偉い方?に電話を繋いでくれました。

まぁなんとかなるか〜と安易に考えていたら

「救助要請ということでよろしいですね?そうなるとヘリ、救助隊の要請で多少お金もかかることになりますが、いいですね?人命がかかっているので、早めに判断してください。」

う……。どうしよう。あまり大事にはしたくないというのが本音だけども……。

「あの、ちなみにどのぐらいお金がかかります?」

「ヘリと救急隊の要請しますので、○○万円ぐらいはかかります。いいですか?人命がかかっているんです。お金のことなんか考えずに判断してくださいね。」

軽く怒られてしまいました……。
そりゃそうですよね。

寝不足が原因?でここまで大事にならないだろとたかをくくっていた結果がこれです。
せめて、一緒に降りてくればよかった。などと後悔してももう遅い。

ひとまず連絡がとれればと思っていたのですが、この山小屋では衛生電話を使用しているらしく(山小屋は基本そうなのかな?)その公衆電話もありました。

「一旦連絡をとってみて、それから判断します。」

と言い、衛星電話で電話をかけてみることにしました。

親切な山小屋のスタッフさんに、有料の公衆電話ではなく、山小屋の据え置きの電話を貸していただきました。
最初からそれに気づければ良かったなー。まぁ、色々焦ってたからしょうがないか。

そして恐る恐る電話をかけてみます。かかるのかな……。

あっ、出た。

「おう、お前か、今降りてるわ」

この時ほど安堵感に包まれた経験はないぐらい本当にホッとしました。

それからしばらくすると降りてきたので事情を聞くと
「とにかく一旦寝ないとやばい」と、コースを少し外れた山の中で寝ていたそうです。

何にせよ無事で良かった。

その後も、下山せずに一旦その小屋に泊まろうかどうかという話にもなりましたが、小屋のスタッフの方に色々良くしていただいたおかげで少し回復したらしく、無事に最終のバスに間に合うように下山できました。

まとめ:山をなめてはいけない

友人の不調の件に関しては、完全に山をなめていた証拠です。
体調が悪いと言っているのにも関わらず1人にした自分の責任です。

まぁ大丈夫だろ

こういう考えが1番危険だということを、この北岳登山を通して嫌というほど学びました。

それでも、登山は楽しいことがいっぱいです。
山に登りたくて仕方がありません。
この出来事を忘れないように、これからも登山をいっぱいしたいと思います。

もし登山をこれから始めようと思っている方がいても、これにビビることなく、登山を楽しんでほしいと思います。

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